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SSI2021 特別招待講演

特別招待講演Special Invited Lecture

特別招待講演1

小林佳世子

講演タイトル: 適応合理的なヒト、という視点 ~ 最後通牒ゲームを事例として

講演者: 小林佳世子 先生

 伝統的なゲーム理論や経済学においては、「ホモ・エコノミクス(以下、エコン)」と呼ばれる、超合理的な意思決定主体をその前提として扱ってきた。目の前の物理的資源を利己的に最大化する主体である。
 しかし、近年の行動経済学やその関連分野の発展は、「エコンのモデル」では説明しきれないアノマリー(例外事象)を多数示すに至った。最後通牒ゲームは、それらの中でも最もよく知られた典型例の1つである。
 ここでは、この最後通牒ゲームにおけるアノマリーを例として取り上げ、エコンとの「ズレ」はなぜ起こるのかという疑問を出発点として、ヒトは進化の中で身に着けたある種の合理性があることを示し、そうした合理性を「適応合理性」とよぶことを提唱する。なおここでいう適応合理性は、いわゆる「超合理性」とも相反するものではなく、むしろ「合理的にみえるもの」と「合理的にみえないもの」の両者を統一的につなぐ概念である。

小林先生 ご略歴
 東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学(理論経済学専攻)。University of Pennsylvania大学留学、南山大学経済学部専任講師を経て准教授。専門は行動経済学、ゲーム理論、情報の経済学、法と経済学。行動経済学会、日本経済学会、日本応用経済学会、法と経済学会、日本人間行動進化学会、日本認知科学会、日本多読学会各会員。著書に『最後通牒ゲームの謎:進化心理学からみた行動ゲーム理論入門』(日本評論社)(第64回(2021年度)日経・経済図書文化賞)。

最後通牒ゲームの謎:進化心理学からみた行動ゲーム理論入門 書籍のご紹介
小林佳世子(著)「最後通牒ゲームの謎:進化心理学からみた行動ゲーム理論入門」(日本評論社)

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特別招待講演2

板宮朋基

講演タイトル: VR/ARによるシミュレーション結果の可視化→体験化→経験化:防災教育と医療への応用

講演者: 板宮朋基 先生

 VR(Virtual Reality:人工現実感)やAR(Augmented Reality:拡張現実)の進歩は近年目覚ましく、高性能かつ廉価なデバイスが日々登場し、小型軽量化も著しい。VR/ARによる没入体験により、シミュレーション結果を可視化から体験化することが可能になる。体験を繰り返すことにより経験に昇華することもできる。本講演者は防災教育と医療における応用に注目し、2014年からアプリの開発と防災訓練や手術支援における実用を開始した。VR津波体験ドライビングシミュレータやVR地震体験アプリ、AR浸水体験・煙体験アプリDisaster ScopeⓇなどを開発し、今までに約3万人が体験した。紙のハザードマップや被災地の映像閲覧と比較して、VR/ARによる災害疑似体験は被災状況を「わがこと」として認識し具体的な対策を始めるきっかけとなることが示された。また、Head Mounted Displayを装着せずに裸眼で高精細な3Dモデルを立体視できる空間再現ディスプレイが2020年に登場したことにより、医歯学教育における利便性が飛躍的に向上している。人間の五感による知覚の割合として83%の情報は視覚情報から得ているとされている。VR/ARデバイスの装着により視覚を支配することにより、体験者に視覚以外の刺激を与えると、より増大されて認識されることが分かった。たとえば煙のAR体験では、実際には煙の臭いを発生させていないにも関わらず、リアルな映像表現と没入体験によって煙の臭いを本当に感じると訴えた体験者が見受けられた。視覚が臭覚に影響を及ぼすクロスモーダル現象(本来別々とされる知覚が互いに影響を及ぼし合う現象)が生じた例である。VR/ARは視覚以外の感覚提示もリアリティ向上には非常に重要であり、触覚・臭覚・味覚は研究の最前線である。

板宮先生 ご略歴
 2004年慶應義塾大学総合政策学部卒業、2010年慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科後期博士課程修了、博士(政策・メディア)取得、2010年東京工科大学デザイン学部デザイン学科助教、2012年Visiting academic of institute for Reconstructive Sciences in Medicine (iRSM), Misericordia Community Hospital, University of Alberta, CANADA、2014年愛知工科大学工学部情報メディア学科准教授(2018年より教授)、2020年神奈川歯科大学歯学部総合教育部教授、2021年同大歯学部総合歯学教育学講座教授、大学院XR研究所所長、2016年~2021年まで国立研究開発法人防災科学技術研究所客員研究員、日本災害情報学会学会誌編集委員、日本シミュレーション外科学会理事、日本顎顔面再建先進デジタルテクノロジー学会理事。

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